株式会社KASHIROの芦原 大(あしはら まさる)様に寄稿いただきました。
この度は、茨木西ロータリークラブ様の例会にてお話しする貴重な機会を頂戴し、心より感謝申し上げます。ご参加の皆様と直接意見交換ができたこと、大変有意義な時間となりました。
今、企業が直面する深刻な問題 ― 介護離職
「親の介護のため、来月で退職します」― このような報告を受けた経験はありませんか。これを介護離職と言い、家族の介護を理由に仕事を辞めざるを得なくなることを指します。
この問題は決して他人事ではありません。近年、年間約10万人が介護離職しており、特に40代~60代の働き盛り世代にそのリスクが集中しています。さらに深刻なのは、調査によるとこの世代の約9割が将来の介護に不安を感じているという現実です。
つまり、今この瞬間も多くの優秀な人材が「いつ辞めなければならないか」という不安を抱えながら働いているのです。企業にとって、これは深刻な人材流出の要因となっています。
介護離職の影響と誤解
多くの人が「家族のためには退職しかない」と思い込んでいますが、実際には離職後の生活の見通しが立たず、経済的・精神的負担が増大するケースが少なくありません。再就職の難しさや収入の大幅減、介護疲労による健康悪化など、本人と家族双方にとって大きな影響があります。
育児・介護休業法と企業の対応
国は育児・介護休業法の整備を進め、短時間勤務やテレワークなどの制度も整えていますが、実際の利用率は低迷しています。「制度の存在を知らない」「職場で相談しにくい」等といった理由から、多くの社員が支援にアクセスできていません。制度の実効性を高めるには、職場環境の整備が不可欠です。
企業型ケアマネジャーの役割
こうした課題に対する新たな解決策として、「企業型ケアマネジャー」が注目されています。介護保険制度に精通したケアマネジャーが企業と連携し、介護と仕事の両立を支援する専門的な役割を担います。具体的には以下のような機能を果たします。
① 社員向け介護研修・制度の情報提供
② 介護不安を抱える社員の相談対応(早期発見)
③ 介護休業や短時間勤務など、柔軟な制度設計支援
④介護中・休業中・復職時のフォロー体制構築
これにより、社員は「辞めるしかない」から「相談すれば道が開ける」へと選択肢が広がり、企業としても大切な人材を守る仕組みが築けます。
最後に
今は元気な家族でも、介護が必要な状況は時に突然訪れます。しかし、介護の知識と備え、そして相談できる体制があれば、介護と仕事の両立は可能です。企業も大切な働き手を介護で失わないよう、国の制度や企業型ケアマネジャーを活用し、社員一人ひとりの暮らしと働き方を支える仕組みづくりが求められています。
改めまして、このような機会をいただいた茨木西ロータリークラブの皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
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