コラム

【寄稿】帽子専門店から感じるアフターコロナの変化

帽子専門店ライオンドウの店主 岩崎英俊様より寄稿いただきました。


創業1903年。地域と共に歩んできた帽子店

私は商店街で帽子専門店を営む四代目の店主です。明治36年、曾祖父が「まだ帽子が珍しかった時代」に創業し、120年以上にわたり地域の皆さまと歩んでまいりました。当時はカンカン帽や中折れハットが西洋の影響を受けてかぶられていて、冠帽率はほぼ100%という帽子をかぶっていないことが恥ずかしいとさえ感じられていた時代になります。商人はカンカン帽、新聞記者はハンチング帽などと職業でかぶる帽子がなんとなく決まっていたのもこのあたりの時代です。現代よりも帽子は“身だしなみ”と“社会性”の象徴であったように思います。

 

ファッションとしての帽子へ

昭和から平成にかけて帽子はファッション性の高いアイテムへと変化を遂げます。帽子は誰しもがかぶるものではなくなっていき、個人の趣味や自己表現の一部として、コーディネートに彩りを添える存在へ、服装に対する小物の位置づけとなっていきます。音楽やカルチャーと結び付きファッションスタイルの一部として認識されるようにもなりました。具体的にはミュージシャンや芸能人がかぶっている帽子と同じものが欲しいといったニーズも高まってアイコンとしての要素も深まってきます。“暮らしの必需品”から“装いを豊かにする道具”へ。社会の価値観が変化する中で、帽子の役割も柔軟に姿を変えていきました。

 

帽子業界にも与えたコロナ禍の変化

コロナ禍が与えた影響は帽子業界にとっても大きいものでした。まず外出が自粛されたために帽子そのものが必要とされなくなりました。少なくともファッションとしての帽子の需要は激減しました。状況が少し落ち着いてきてからは主婦が近くのスーパーへ化粧なし(いわゆる「すっぴん」)で買い物に行くのに便利ということでツバの長い深めのキャップが売れるようになり、アウトドア人気から機能性の高い商品が求められるようになっていきました。加えて温暖化の影響もあり、冷感素材やたれ付きの帽子が流行するなど帽子が単なるファッションアイテムの役割を超えた存在になってきたように感じます。

 

ネット通販からも感じた変化

当店は実店舗だけではなく、ネット通販もおこなっております。ネット通販歴は現時点で17年程度ですが、コロナ禍からも大きく変化があったように思います。一番感じる大きな変化はお客様との「温度感」です。当店はネット通販初期から手書きでメッセージカード書いて商品に同梱するといったことをしておりますが、コロナ禍以降そういった対応が非常に喜ばれるようになってきたと感じております。ホームページのレビューへの記載もメッセージカードが嬉しかったといったご意見が多く、人と人との接点が希薄になった時期だからこそ、「小さな気持ちの交流」が大きな価値になってきたのかもしれないと思います。

 

地域社会に応えるべき帽子店として

そうしたことを踏まえ、アフターコロナでは当店に求められる役割も変わり、地域社会のお客様の期待に応え貢献できることは変化しているように思います。帽子を単なるファッションアイテムとしてだけではなく、熱中症対策や頭部を守るものとして、新しい枠組みの捉え方が大事になり、また単に帽子そのものを売るといったことではなく、コミュニケーションを通じて、商品の価値やアフターケアなど情報で付加価値を高めつつ、お客様の気持ちに寄り添った接客をする必要が強くなってきたのではないかと感じます。「帽子を売る店舗」から一歩進み、帽子を通じて生活を支える「地域インフラの一部」といった意識で日々地域に寄り添い続けてまいりたいと思っております。


当クラブでは、社会をより良くする視点や気づきを提供する記事のご寄稿を募集しております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。