北海道恵庭市に拠点を置く西村英晃氏(恵庭ロータリークラブ所属)は、中古車販売や車検、修理、レンタカーといった車関連事業を軸に、独自のスタイルで事業を広げてきました。その特徴は、信頼できる外注業者に業務を任せ、強固な人脈を生かしながら経営を進めていく点にあります。
この姿勢の根底にあるのが、ロータリーの「四つのテスト」です。言行はすべて「真実かどうか、みんなに公平か、好意と友情を深めるか、みんなのためになるかどうか」。西村氏は、この指針が自身の仕事に深く根付いており、それが事業の成功につながっていると語ります。ロータリアンが日々の判断のよりどころとするこの基準を、ビジネスの現場で実践し続けてきたのです。
40代にして年商1億円を超えた西村氏は、ハワイ産桑茶の販売や葬儀受付業務へと事業を多角化させていきました。そして次なる挑戦として選んだのが、北海道十勝地方の新得町にある自動車学校の経営を引き継ぐことでした。
よそ者の視点に託された事業承継と過疎の町のポテンシャル
新得町は、かつて1万6000人弱だった人口が5500人弱にまで減少した過疎地です。「新得モータースクール」はもともと青森の会社が経営していましたが撤退し、その後は地元の支援によって存続してきました。
前社長の武田直幸氏は、ただ後継者を探していたわけではありません。教習生が減少しても経営が成り立つよう、新得地鶏の販売や町バスの運行といった収益の仕組みをあらかじめ整えたうえで、新得町に未来を描ける新しい人材を求めていました。そこで白羽の矢が立ったのが西村氏です。町外の人間ならではの新鮮な視点と豊富なアイデア、人脈を持ちながら、石橋を叩いて渡るような慎重さも併せ持つ点が高く評価され、武田氏は1年近くをかけて西村氏を口説き、社長就任を承諾してもらいました。
武田氏がこれほど外部人材にこだわったのには理由があります。長く同じ町に住んでいると、地域の良いところも悪いところも見えなくなってしまう。だからこそ、町外から来た西村氏のような新鮮な意見が重要だと考えたのです。近隣の富良野がリゾート地として急速に発展する、いわゆる「ニセコ化」が進むなか、新得町もまだ大きく化ける可能性を秘めていると武田氏は捉えています。もともと北海道が移住者の手によって開拓された歴史を持つこともあり、外部からの視点がもたらす新しい取り組みには、大きな期待が寄せられています。
外国人技能実習生という新たなターゲットへの挑戦
現在、モータースクールの主な収益源は、卒業を間近に控えた高校生や、高齢者講習です。西村氏はこの既存の基盤に加え、新たなビジネスモデルの構築を見据えています。着目したのは、十勝エリアの農業などを支える外国人技能実習生の増加という社会の変化です。
日本の運転免許を取得したいという外国人労働者のニーズは、今後さらに高まると見込まれます。そこで西村氏は、フィリピンやインドネシアから実習生を300人規模で受け入れる計画を持つ友人の起業家と連携し、免許の必要な実習生には新得モータースクールで取得してもらうという送客の構想を進めています。自らの人脈をフルに生かし、これまでにない新しい顧客層を開拓しようとしているのです。
地域との融和が育む夢と希望
週に2日を新得町で過ごす西村氏は、札幌周辺の都市部とは異なる時間の流れに魅力を感じています。ゆったりとしたスローな時間と、居酒屋に人が自然と集まってくるような温かい人間関係。そうした地方ならではの豊かさが、この町にはあります。
町内を歩けば住民から相談を持ちかけられるなど、西村氏はすでに期待を集める新しい顔として受け入れられています。町の幹部に対して国際協力を提案するなど、出しゃばりすぎない範囲で積極的に地域と関わる姿勢も、地元の信頼につながっています。「過疎の町ではあるけれど、新得には夢と希望がある」。西村氏はそう語り、地域が秘めるポテンシャルと自身のビジネス手腕を掛け合わせた挑戦に、確かな自信を見せています。
