コラム

ごみ拾いを競技に変えたら118人が集まりました 会津若松の合同事業に学ぶ組織のつくり方

「社会貢献活動を続けてはいるものの、社員は義務として参加しているだけに見えます。報告書に載せるための行事になってしまっている。」
そうした手応えのなさを感じている経営者は、少なくないはずです。

ロータリーの友2026年9月号に、会津若松市内の4つのクラブが合同で開いた「第1回スポGOMI in あいづ」の報告が掲載されていました。会員数20人程度の小さなクラブが手を組み、30チーム118名を集めて75キロのごみを回収した事例です。資金もノウハウもない状態から、どのように形にしたのでしょうか。そして何がクラブに残ったのでしょうか。企業の社会貢献活動と組織づくりを考えるうえで、示唆に富む内容でした。

ごみ拾いを競技に変えると人は自分から動きます

スポGOMIは、あらかじめ決められたエリア内で制限時間内にごみを拾い、ごみの種類と重量に応じたポイントをチームで競う競技です。ペットボトル、たばこの吸い殻、可燃ごみといった区分ごとに配点が決められており、単に量を集めればよいというものではありません。

この仕組みの巧みさは、義務として受け止められがちな活動を、参加したくなる形に変換している点にあります。同じ「ごみを拾う」という行為でも、頼まれて拾うのか、得点を狙って拾うのかでは、参加者の姿勢がまったく変わります。制限時間があり、範囲が区切られ、点数がつくというだけで、大人でも本気になります。

種類ごとに配点が異なるという設計も、よく考えられています。重いものを集めれば勝てるわけではないため、どの区分を狙うか、どの範囲を回るかという判断が必要になります。ここに作戦を立てる余地が生まれ、チーム内で相談が起こります。黙々と手を動かすだけの時間ではなく、話し合いながら動く時間になるという点が、この競技の性格を決めています。

もう一つ見逃せないのが、参加のしやすさです。年齢や体力、役職を問わず、誰でも同じ土俵に立てます。どこを回るか、どの種類を狙うかという判断が結果を左右するため、足の速さだけでは勝てません。普段は前に出ないメンバーが戦略を立てて中心になる、といったことが自然に起こります。社内行事で起こりがちな、特定の人だけが盛り上がって他は見ているという構図になりにくい設計です。

社会貢献活動が形だけになってしまう原因の多くは、活動の内容そのものではなく、参加者が受け身に置かれる設計にあります。同じ活動でも、参加の形を少し設計し直すだけで、当事者意識は大きく変わります。

会員20人のクラブが4つ集まって大会をつくりました

会津若松中央、会津若松城南、会津若松、会津若松西の4クラブが合同で企画したこの大会には、開催に向けて2つの壁がありました。

一つは資金です。どのクラブも会員数は20人程度で、単独で予算を確保できる規模ではありません。もう一つはノウハウです。地元での開催実績がなく、どう運営すればよいのかを誰も知らないという状態からの出発でした。

この2つに対する対応が、そのまま中小企業の参考になります。

ノウハウについては、すでに開催実績のある近隣の福島ロータリークラブと猪苗代ロータリークラブから、直接運営の方法を学びました。自分たちで一から手探りするのではなく、先に経験した人から教わるという判断です。時間も失敗も減らせるうえ、教える側との関係も生まれます。企業であれば、同業の知人、取引先、商工会議所や業界団体など、聞きに行ける相手は身近にいるはずです。前例がないという理由で見送られてきた企画の多くは、自社に前例がないだけで、どこかにすでに経験した人がいます。

資金については、一つの財源に頼らず組み合わせました。地区補助金を活用して開催資金を確保し、さらに会津若松市からの協力と民間からの協賛金を集めて、ウェブサイトの構築費、印刷費、当日の機材費をまかなっています。これによってクラブ個々の金銭的な負担は大幅に軽くなりました。

そして準備そのものも、外注に頼るのではなく、会員がそれぞれの得意分野を持ち寄って分担しています。仕事で培った技術や人脈が、そのままプロジェクトの推進力になりました。ここが重要な点です。お金を払って誰かにやってもらった行事と、自分の腕を使ってつくり上げた行事とでは、終わったあとに残るものがまったく違います。

自社だけで抱え込まず、志を同じくする相手と組む。知らないことは先行者から学ぶ。資金は複数の出どころを組み合わせる。人の力は外から買うより内側から引き出す。予算も人手も限られる組織が新しいことを始めるときの、実践的な手順がここに揃っています。

118人と75キロが組織に残したもの

当日は、地区のリーダーである地区ガバナー夫妻やガバナーエレクトから一般の市民まで、総勢30チーム118名がエントリーしました。市役所を中心とした半径1キロから1.5キロのエリアで50分間ごみを拾い、全チーム合計で75キロを回収しています。主催した側の予想を超える量でした。

しかし、この事業がもたらした最も大きな成果は、集まった人数でもごみの量でもありません。小さなクラブの会員一人ひとりの中に、たとえ個々の組織は小さくても、力を合わせれば地域社会を巻き込む大きな活動ができるという確信が生まれたことです。そしてこの共通の成功体験が、4つのクラブのあいだに深い絆を残しました。

企業の組織づくりに引き寄せれば、これは自己効力感の話です。自分たちにはこの程度のことしかできないという思い込みは、実績によってしか書き換えられません。研修や訓示では変わらないものが、一度の成功体験で変わることがあります。

その体験を得るには、日常業務とは別の、成果が目に見える形で表れる場が必要です。売上目標のように長い時間をかけて評価が定まるものではなく、その日のうちに結果が出て、全員でそれを確認できる場です。合計75キロという数字は、自分たちが半日で何を成し遂げたかを、誰の目にも同じ形で示してくれます。

準備の段階で外部と交渉し、資金を集め、役割を分担した経験も、そのまま組織の力として残ります。ここを若手に任せれば、社外を巻き込んで一つの企画を成立させるという、日常業務では得にくい経験の場になります。予算の限られた企画をどう成立させるかという工夫は、そのまま本業の課題解決の訓練でもあります。

加えて、市役所が協力し、地元企業が協賛し、市民が参加した行事であるという事実は、地域における存在の示し方としても機能します。何をしている組織なのかが具体的な形で地域に伝わることは、人を迎え入れる際にも働きます。

自社の活動に置き換えるための3つの視点

最後に、自社に持ち帰るための視点を3つに整理します。

第一に、活動の中身ではなく参加の設計を見直すことです。清掃活動そのものをやめる必要はありません。時間を区切る、チームに分ける、成果を数字で示す、結果を共有する。この程度の設計を加えるだけで、同じ活動が参加したくなるものに変わります。参加率が上がらないのは社員の意識の問題だと結論づける前に、参加の形を点検する余地があります。

第二に、単独開催にこだわらないことです。取引先、同業の仲間、地元の団体に声をかけ、複数社で一つの行事をつくる。費用が分散するだけでなく、社外の人と一緒に汗をかくことで、通常の商談では生まれない関係が生まれます。会津若松の事例が示しているのは、小さな組織どうしが組めば、単独では届かない規模の活動が実現するという事実です。

第三に、一度で終わらせないための道筋を用意することです。せっかく生まれた熱量も、次につながる場がなければ薄れていきます。第1回と名づけて継続を前提にする、当日の記録を残して社内外に共有する、次回の実行委員を交代させて経験する人を増やす。こうした手当てによって、行事は組織の文化として定着していきます。

社会貢献活動を負担として扱うか、組織を育てる機会として扱うかは、活動の内容ではなく設計で決まります。会員数20人のクラブが4つ集まって118人を動かした事例は、規模の小ささが制約にならないことを示しています。まずは身近な活動を一つ選び、参加の形を組み立て直すところから始めてみてはいかがでしょうか。