【要約】
第1523回例会では、黒根会長が9月の「基本的教育と識字率向上月間」にちなみ、ロータリー財団による世界各地の教育支援と、日本や世界の識字率・大学進学率について話しました。大森会員は「私と茶道60年『伊勢物語』」と題してスピーチを行い、高野山の持明院ゆかりの角盥(つのだらい)を披露しながら、歌物語の魅力を紹介しました。
【詳細報告】
■会長の時間
黒根会長は、前回までに取り上げた「ロータリーの友月間」に続き、9月のもう一つのテーマである「基本的教育と識字率向上月間」について話しました。
ロータリー財団は、奨学金、教材や学用品の寄贈、奉仕プロジェクトを通じて、世界中で教育支援を行っています。その例として、アフガニスタンで貧困と教育の不平等をなくすためにロータリー会員が女子学校をつくった取り組みが紹介されました。成人の半数以上が十分な識字力を持たないといわれる米国デトロイトでは、地元の非営利団体と協力して成人の個人指導にあたる講師を募集・研修し、読み書きのレベルが3学年分向上した成人が500人に達したそうです。このほか、南アフリカ、プエルトリコ、米国で採用されている、子どもたちが文字を名前ではなく「音」で覚えるための教授法を教師に指導するプログラム、レバノンのすべての公立学校にきれいな水を提供する設備を整えるための1億ドルの補助金、ケニアで政府と協力して進める「教育のためのグローバルパートナーシップ(GPE)」などが挙げられました。
日本の識字率は、ユネスコなどのデータでは15歳以上で99.9%といわれています。OECDの2000年時点の調査では、先進国・新興工業国で99%、世界全体でも79%とされ、世界的にも非識字者は減ってきています。調査年や方法によって諸説あるものの、識字率がおよそ50%以下とされる国には、南スーダン、チャド、マリ、中央アフリカ共和国、ソマリアなどアフリカの国々が挙げられます。今年度のRI会長オラインカ・ハキーム・ババロラ氏の出身国ナイジェリアの識字率は、62〜66%といわれています。
話は高等教育にも及びました。大学・短大・専門学校を合わせた高等教育機関への進学率は、日本は85%で、OECD加盟38か国(平均57%)のなかでもトップクラスです。一方、大学だけで見ると54%で、それほど高くはありません。世界の大学進学率の上位国は調査によって顔ぶれが異なりますが、どちらの調査を見ても、大学進学率の高さがGDPや国の豊かさに直結している印象はないと述べました。大学で教鞭を執る黒根会長は、大学で学問をする本当の志を持つ学生がどれだけいるのか疑問に感じているとし、大学進学が目的化している現代の風潮を見直す必要もあるのではないかと問いかけました。
■大森会員のスピーチ「私と茶道60年『伊勢物語』」
大森会員は、川良一史氏による現代語訳『伊勢物語~令和現代訳 完全版』の「はじめの言葉」を紹介するところからスピーチを始めました。
「昔、男ありけり。」の一文で始まる『伊勢物語』は、物語と和歌が互いを照らし合う「歌物語」の代表作で、千年以上にわたって読み継がれてきました。恋の機微、旅の眺め、季節の移ろい、宮廷の作法などを描いた一つひとつの段は掌編のように短く、全部で百二十五段から成ります。成立の経緯も本文も一つに定まらない流動的な作品で、主人公を在原業平と言い切るよりも、業平の逸話や評判を核にさまざまな短い章が重ね書きされてきた作品として受け取るほうが自然だと紹介しました。その魅力は技巧よりも、言葉が交わされる「場」の生々しさにあり、ほんの一瞬の出来事が和歌の一首で反転して幕を閉じる身軽さは、現代のメッセージ文化に慣れた私たちにも親しみやすいといいます。
大森会員は、古文に親しむ機会がなかったため、今あらためて学びの時間を持てていることがありがたいと述べ、いくつかの段を原文とともに紹介しました。その一つが「盥(たらい)のかげ」の段です。一夜だけ通ってきて、その後は訪れなくなった男がいました。女の親は腹を立てます。女が手を洗おうとして水を使うと、盥の水面に自分の姿が映りました。女はそれを見て「物思いをしているのは自分ひとりだと思っていたけれど、水の下にも物思う人がいる」と、水に映る自分の姿を和歌に詠んだという話です。
この日は、物語に登場する盥にちなんで、高野山の持明院ゆかりの品である角盥(つのだらい)を借りて会場で披露しました。黒漆で全面が塗られ、内底には波模様が金で描かれており、時代を超えて大切に保存されてきたことがうかがえる品です。会員からは、珍しい品を間近で見られたことへの感謝の声が寄せられました。
茶道を始めて60年になる大森会員は、この秋のお茶会に『伊勢物語』を取り入れようと考えて学び始めたそうです。今後もこのテーマでお茶会を続けていく予定で、毎月8日に茨木で開いているお茶会への参加を呼びかけて、スピーチを締めくくりました。
